ダイビングスポットとして知られる日南市の離島、大島近辺の海は、MRTの水中取材班が長年、取材を続けている海ですが、先月、その大島近海で、九州最大級のハマサンゴが見つかりました。
日向灘に浮かぶ大島近海は、港から近いことや、いくつものダイビングスポットがあることから、県内外のダイバーに人気の海です。大島近海には100種類以上のサンゴが生息し海底を埋め尽くしていて、複雑な形状で広がる風景の中には、身を隠すようにさまざまな生き物が住み着いています。サンゴが「海の森」と言われるゆえんです。
水中取材班の前にぽっかりとドーム状の、大きな岩が現れました。
表面をよく見ると、規則的に並んだ模様がびっしりとあり、さらに模様の一つ一つには、ちいさな触手が生えています。
実はこれ、岩ではなく巨大なハマサンゴなのです。
1ミリほどの大きさの模様は、それ一つが、ポリプと言われる生命体。
その小さな無数のポリプが集まって、大きなコロニーを作り海流や波にも流されない、石灰質の土台を大きくしながら生き続けています。大島近海で見られる通常のハマサンゴは、20センチ程度ですが、この大きなハマサンゴの群体は、周囲およそ12メートルもあり、高さはおよそ2メートル。
実に、数百年をかけて、小さなポリプが集まって作り上げた姿なのです。
以前から地元ダイバーには存在が知られていた巨大サンゴ。先月14日、宮崎大学海洋生物環境学科の深見裕伸教授がダイバーと共同調査を行いました。熱帯の海ではよくみられる大きなハマサンゴですが、九州の周辺でこのように大きなものが見つかるのはあまり例がないといいます。
(宮崎大学海洋生物環境学科・深見裕伸教授)「大きなハマサンゴは本州、九州以北だとたぶん10群体未満だと思う、僕の知っている限り5個、珍しさで言うと非常に珍しいと。樹齢何千年みたいな大木が海の中に見つかりましたと。それくらい大昔からいるサンゴが生き残っていたということ」
豊かに見える大島周辺の海ですが、実は過去に、サンゴを食べる貝 ヒメシロレイシガイダマシによる食害や、これまでに記録のないサンゴの病気、さらには、オニヒトデによって食い荒らされる事例を次々に確認。健全なサンゴの群落はここ50年で著しく減少していることがMRTの取材で分かっています。そんな危機的な状況の中、今回のハマサンゴが発見されたのは、長年、サンゴの保護に携わっている地元ダイバーや、宮崎大学の研究メンバーによって、定期的なオニヒトデの駆除や調査活動が続けられてきた海域。常に人の手によって守られてきました。
(ダイビングショップオーナー 福田道喜さん)「ここは僕らの庭で、ヒメシロレイシガイダマシとかとったりして意外とサンゴが増えてきているところでもあるので。こういうのがあると、元気づけられるし、みんなに紹介できればいいなとは思っています」
また、ハマサンゴは、成長の過程が年輪のようにその骨格に刻まれる特徴があります。
そこから、気候変動の歴史を紐解く鍵を持つ生物だと、言われています。
(宮崎大学海洋生物環境学科・深見裕伸教授)「サンゴの中でいちばん気候変動とか変化をみられるのがハマサンゴなんです。これくらい大きなサンゴだとある程度変化がみられるので、たぶん非常にいい研究対象だと思う」
大島の海底で、数百年もの間、静かに生き続けてきた、ハマサンゴ。
日向灘の豊かさと歴史が刻まれたその姿は、海を守ろうとする人々が見い出した、奇跡の光景です。
MRTテレビ 8月18日放送「Check!」より